「私が彼を殺した」でミステリに興味が出たので、ちょっと前に気になっていたこの『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』と続く米澤穂信氏の「古典部」シリーズを購入し、『愚者の~』まで読破しました。


主人公"折木奉太郎"の属する古典部の面々が、彼らの学校で持ち上がるおおよそ事件とはいえないような、それでも奇妙な"謎"を解決していくという青春ミステリで、決して高校生探偵が殺人事件を鮮やかに解決する類の話ではありません。
千反田の「人の亡くなる話は嫌い」ではないですが、所謂一般の推理小説とは趣向の違った、すなわち悪役となる犯人が登場せずに、高校生活における奇妙な出来事を"高校生らしく"奉太郎が謎解きするところがこの小説の魅力でしょう。
毎度奉太郎の発想力には舌を巻きました。読者も彼と同じ情報が与えられているはずですが、少なくとも自分にはあのような推理はどう考えても出てこなかったでしょう。『氷菓』も『愚者~』も"謎解き"に関してはぞれぞれ意外な面白い解答が示されていたと思います。






・・・なんですが、どうもこの主人公"折木奉太郎"が好きになれません。その理由は『愚者の~』における入須冬実の"スポーツクラブ"のたとえ話がそのまま流用できそうです。才能あるものが自身の才能を自覚せず、「今回上手くいったのはたまたま運がよかっただけだ」と。"見ている側が馬鹿馬鹿しい"とは上手く言ったものだなと思いました。彼が自前の推理を披露する度にイライラしていたのはそのためでしょう。
ただ、同じようなキャラ付けの鳴海歩(漫画"スパイラル~推理の絆~"の主人公)は好きなんですよね。まぁそれは恐らく、イラストに由るところが大きいのでしょう。もしも「古典部」シリーズが漫画だったなら、せめてライトノベルのように挿絵の1枚でもあったなら奉太郎に対するイメージもまた違ったろうな~と思いました。別にイラストが入ってればよかったのに、といった意味ではありません。
外見のイメージはキャラ付けに大きな影響を与えるということです。



…などともっともらしく述べましたが、実際のところ主人公然としない彼のキャラクターが単純に好きじゃないだけかもしれません。自分の求めるヒーロー像とずれているからでしょう。
最後に残った「クドリャフカの順番」で奉太郎のヒーローらしい見せ場があればよいのですが、さてさて。





今日のBGM:東京ラブストーリー/FREENOTE

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